CES と5G通信

2019年1月8~11日の4日間ラスベガスで「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」が開催された。このショーは$100の会費を払って参加しないとみることができない業界向け見本市である。元々は家電の展示会に過ぎなかったが、近年は自動車業界、電子工業界、情報通信業界などが競って最新技術を披露するようになり、まさに最新技術の展示会となった。今年の技術トレンドをコンパクトに要約したのが上の図である。
今回は“5G “通信を取り上げ、この技術が持つ意味を考えたい。CESでは”5G”をベースとした”IoT”の展示が多く出されていた。自動運転、自販機、ヘルス用品、位置検出用ビーコンなど、ありとあらゆる機器が”5G”ネットワークでつながり、新たな世界を作り出してゆく。
(以下IEEE Spectrum 2019年1月から要約)
ソフトバンク・グループにArmリミテッドという会社がある。この会社が主催したArmTechConという展示会が2018年10月16日~18日に、サンノゼ・コンベンション・センター開かれ、Arm CEO サイモン・セガールが基調講演のなかで、技術の世代に関して次の様に解説した。
ウエーブ1:メインフレーム・コンピュータの時代
ウエーブ2:パーソナルコンピュータとソフトウエアの時代
ウエーブ3:インターネットの時代
ウエーブ4:モバイルとクラウド・コンピューティングの時代
ウエーブ5:この時代を一言で表現することは簡単ではない。すべての物にコンピュータが入り、インターネットでつながるが、それをIoTという言葉でくくるのは見方が狭すぎる。5Gではアルゴリズムによるコンピューティングではなく、データ・フローに道をゆずるだろう。データが物語り、我々はそれに従って判断することになる。
セガールはさらに付け加えて、「ウエーブ5では従来のコンピューティング・パワーの測り方(メガヘルツ、ギガフロップス、テラバイト)が時代遅れとなり、デバイス、ネットワーク、クラウドなどがすべて一体化したものを考えなければならない。」
Armのシニア・副社長ドリュー・ヘンリーは、モバイル通信の歴史について解説した。
2G:テキストメッセージを送ることが出来るようになった。
3G:音楽やビデオをデバイスに乗せることが出来るようになった。
4G:音楽やビデオをストリームとして流すことが出来るようになった。
5G:このジェネレーションの変化は過去に比べ、最も大きなものとなるだろう。ネットワークプロバイダーは、最早自分たちがどれだけのユーザやスクリーンにサービスを提供するかではなく、どれだけ多くの物をつなぐ必要があるかを考えることになる。
セガールは2035年には1兆台のデバイスが5Gネットワークにつながれるだろうと予測している。
しかし、ここではシステム・エンジニアリングの原則に立ち戻り、システムの構成をよく吟味する必要がある。システム・エンジニアリングでは、システムの健全性や、脆弱性への対処という観点から、サブシステム分割を要求している。サブシステムはそれ自体で独立機能を果たすことが出来、万一、一つのサブシステムが損傷しても、全体システムには影響が及ばないように設計すべきなのである。
卑近な事例では、JRと私鉄の相互乗り入れや、東海道―上野東京ラインなどは、広域に路線がつながれ便利になった一面、一部の事故で広範囲に影響が出て列車が運休せざるを得ないケースが目立つ。
安易な接続は「危険」という認識が重要である。